アートとカネ、eスポーツとカネ|ecg.mag #02

あるところにはあるのに、儲けるのはむずかしい
enchant chant gaming 2023.07.22
誰でも

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enchant chant gamingの瀬下です。

なんとなく業界動向的なものに触れたくなって、報告書をいろいろ見た。経産省の「アートと経済社会について考える研究会の報告書」は、文化芸術の価値を社会に還元する方向の議論が無限に展開されている。胃もたれしそうな感じだけど、具体的な数字がそこそこあるから意外と学びはあった。

令和3年度コンテンツ海外展開促進事業(Z世代におけるeスポーツおよびゲーム空間における広告価値の検証事業)」も経産省の報告書。eスポーツの広告効果というアヤしいトピックに真面目に向き合っていて面白い。

──僕がプレイするスマブラSPは、現在発売から5年が経過し、シーンにも少し停滞感が漂っている。競技としてのスマブラSPを盛り上げるために、eスポーツ観点でなにかできないか。そう思ってこの報告書を開いたけど、スライドをめくるにつれて自分にやれることはあんまりなさそうという印象に。大きいプロジェクトを立ち上げるより、推してる選手を個人として支援したほうがいいかも。具体的には、遠方の大会に若いプレイヤーが参加するときの交通費支援とかやりたい。知見がある人いたら話したい。

🌐今月のトピック紹介

Adobe Photoshopの生成AI機能を用いてデザインのバリエーション展開をする実験とその過程の記事です。生成AIのクリエイティブ現場での利用については、権利マターの議論が絶えませんね。でも、Adobe製品のAIトレーニング素材は著作権のクリアランスを経ています。AIによる画像生成サービスはいくつもありますが、この分野でもAdobeがシェアを握ることになるんでしょうか?(太田)

アーティストのTohjiへのインタビュー記事。ライフスタイルと表現の関係性やら、アジアにおける表現活動の展望やら、盛りだくさんです。なかでも、Tohjiの音楽には〈夏〉の季節感が重要なんじゃない?ってやりとりがあって、頷きます。夏休みや行楽地、バカンスといったイメージと、それらと無縁でもない幼年時代の記憶といったもろもろを、彼の音楽から聴き取れる。そんな気がする。(太田)

マテリアルに意味を施す営為をデザインと捉える。そのような観点を提示する展覧会です。素材化されているものは、ヒトの毛髪や甲殻類のキチン質、牛と豚の膀胱など多岐にわたります。でも、奇抜な素材と戯れるだけではデザインとは言えないような……。素材選定ひとつでサプライチェーンも工法も変わるわけで。デザインの全行程をまるごとシミュレーションするような思考があってほしいと思ってしまいました。(太田)

カオスマップは「へー」って感じだけど、トレンド予測がおもしろかった。少子化対策関連で官民連携の風が吹いているとか、ゲームで遊びながら出会えるアプリとか、脱ルッキズムの動きがあるとか。マッチングアプリを通して眺めると、社会の動きについてリアリティが生まれるような気がする。(瀬下)

良くも悪くもかなりラフな勉強会のレポートがあがっていて、この分野の雰囲気を知ることができる。論文は読めばいいけど、研究者たちのノリみたいなものって門外漢にはどうしてもわからないから助かる。ちなみに、提出されている政策提言はかなり抽象的。抽象的である理由も書かれているが、それでも気になるほど。悪い内容とは思わないが……。(瀬下)

国内トップクラスのゲーミングチームCrazy Raccoonが主催するCRカップは、プロゲーマーとストリーマーの混合チームで競い合う大会。格ゲーというジャンルの規模感を考えると、ストリートファイター6がフィーチャーされたこと自体がニュースだったのに、大会自体の盛り上がりっぷりにはさらに驚かされた。操作の簡略化によって格ゲー初心者のVTuberでもそこそこ動かすことができ、ドライブラッシュのシステムや演出は大会を見ている誰もが熱い気持ちになれる。ストリートファイターの新作が、ここまで配信映えするゲームになっているとは誰も思わなかったのではないか。紹介しているURLは、大人気VTuberがたくさん参加しても負けないウメハラのタレント性がすごいなっていう。ハマるのがコワくてまだ買っていないけど、今にも買いそう。アカン。(瀬下)

さいきん配信者界隈で流行した「ひたすら上空を目指す」アクションゲーム「Only Up!」。少しでも足を踏み外せば一気に下層へ落ち、運が悪いと地上まで戻されることもあるという畜生仕様で、さまざまなVTuberのリアクション芸を楽しめる。特に中盤のとある仕掛けが大変おもしろく、「リアクション芸に慣れすぎて悲鳴さえも予定調和的になりつつある配信者たちに真のリアクションをとらせるにはどうすべきか」という問いから逆算されたゲームのようにも思えた。なかでも秀逸だった葉山舞鈴のリアクションをピックアップ。(松本)

しばらくコラボ配信のなかったにじさんじのフミと長尾景によるユニット「フ景罪」が、半年ほどリアルで喧嘩していた件が本人たちの口から(エンタメ昇華済みの形で)語られた。本人たちが「大人でもガチ喧嘩するんだなと思った」としみじみ振り返ってるのが面白い。元動画は、和解後の二人が「価値観の違い」をあぶり出すお題で討論しあう企画。お題は「喧嘩したときに納得するまで話し合うか、とりあえず謝るか」など、絶妙に実際の喧嘩になぞらえたものになっている。表に出る人たちってガチで揉めたらどうするんだろう、という下世話だが本質的でもある疑問に手ざわりを与えてくれていて興味深かった。(松本)

韓国のVTuberグループ「StelLive(ステライブ)」の1期生、純角ユニの1stシングル。作曲は웅킴、Stereo14というK-POP布陣でありつつボカロっぽいノリも感じる(個人的にはIUの「BBIBBI」を想起した)。ちなみにステライブは設立経緯がとてもおもしろくて、もともと人気ストリーマーだったカンジ(강지)ら3名が日本のVシーンをベンチマークにして2021年に立ち上げたYume Percentがその前身(2022年に解散)。当時は一応日本シーンを狙っていたようで、日本のファンもちらほらいる。そのメンバーのうち藍璃かんなと純角ユニを1期生とする形で2023年1月に再始動したのがステライブで、最近2期生もデビューした。ちなみに純角ユニは(おそらく)日本出身だが基本的に配信は韓国語で行っていて、キャラクターデザインは日本のV界隈でも知られているイラストレーターのなび(他担当にホロENのワトソン・アメリアなど)。他にも紹介したい内容は山ほどあるけどとにかく日韓Vシーンの交差点?として要注目なグループといえる。そんなステライブから日本でもウケそうな楽曲が出てきたのはうれしい。(松本)

ツイッター同時代史を振り返るコンテンツが最近結構増えてきている気がする。自分たちの実存と結びついた何かを相対化する作業を、同世代の人たちがやっているのを見ると不思議な気持ちになる。(松本)

🔗オマケ

📒編集後記

  • 夏になると、フィクションの大長編や長大なシリーズものに触れたくなる感じがあります。昨年のいまごろは劉慈欣『三体』をひと夏で読み切ったのでした。今年は『指輪物語』かな。まずはピーター・ジャクソンの映画を見直すところから。(太田)

  • 渋谷BeeSmashというスマブラSPの対戦会の主催者と飲んできました。飲み会自体わりと久々。対戦会っていう文化自体の説明をしたほうがいいんだけど、割愛。平日ほぼ毎日やっていて、場所もいい感じ。終わった後はダベったり筋トレやったりみたいな感じで、部活みたいなノリがあって面白かったです。今度は選手として会に参加しようと思います。(瀬下)

  • 引っ越しが忙しくて今月はあまりコンテンツに触れられなかった。特にWAKTAVERSEまわりの怒濤の動きについていくのが大変……。でも新居は快適だし街もいい感じでおおむね満足。横浜〜関内あたりに来ることがあれば声かけてください。(松本)

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ここに入りきらなかったURLを貼ったり、ゲーム制作の進捗を報告したりするDiscordをやっています。気になる方はコチラからぜひ覗いてみてください。(瀬下)

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