二度目のゲムマ参加をふりかえる|ecg.mag #11

ブースでぼーっとしてたら次回作の構想が
enchant chant gaming 2024.05.01
誰でも

ecgの松本です。先日、2024年春のゲムマに参加してきました! ecgとしては2度目のゲムマでしたが、今回もいろいろ勉強になりました。現地で香感覚を購入してくださった方、お話しにきてくださった方、ありがとうございました。

以下、感想をつらつら書いていきたいと思います。まず、今回は会場が東京ビッグサイトの西館から東館に変更になったこともあり、人の流れや混み具合が若干変わっていたような気がします。試遊したり食事したりするスペースが広くなっている反面、なんとなくサークル数が少なくなっているように感じたけど気のせいなのかな……。なお参加者数自体は、公式発表によると前回とほぼ同じだったようです。

印象的だったのは、海外のサークルや企業の参加が増えていた(ように感じられた)こと。2日目の終わり頃、いきなりふらふらっとやってきた台湾のサークルの方が「これもらってください!」とそのサークルのゲームを渡してくれて、異文化交流の風を感じました。肝心の香感覚の売れ行きは、宣伝にあまり力を入れられなかったこともあって、ぼちぼちな感じ。ただ個人的には、ブースでぼーっと座っている間に次回作のアイデアがいろいろ生まれたので結果オーライでした。ボドゲのアイデアって出そうと思ってもなかなか出ないので助かった。

あと他のサークルのブースを見て回ったり、チラシをもらったりした感想としては、トレンドの変化が速いなと感じた。前回はパーティゲームが流行っていたように見えたけど、今回はそこまで多くなかった気がします。ボドゲ知見が少なくてうまく言語化できないけど、結構短いスパンでトレンドが動くんだなあというのを肌で感じられたのは良かったのかな。自分も「あのゲームの感じをベースにアレンジしてみよう」みたいな感じで考え始めることが多いので、目立つ作品がひとつ出ると結構トレンドが追従するんだなあという印象です。

ゲムマ後に3人でいろいろ話していて、ecgとして作りたいボドゲの定義は「感想戦が盛り上がるゲーム」だというのを再確認できたのも大きかったです。極端にいえば、プレイ時間そのものよりも、その後の感想戦の方が長くなるようなゲームを作りたい。その定義を満たすなら、ゲームのジャンルはコミュニケーションゲームでもトリックテイキングでもなんでもいいのかなと。

じゃあどういうゲームなら感想戦が盛り上がるのか……についてはいろいろ仮説があるんですが、一番大事なのは、各プレイヤーのプレイスタイル(性格・気質・こだわり)が際立ちやすい設計になっていることと、そのプレイスタイルを「狙い」に変換し、プレイに反映させられることだと思っています。このへんはまだきれいに整理できてないんですが、頭のなかにはなんとなくイメージがあります。

今回のゲムマで出てきたアイデアをブラッシュアップして、来月の文フリでプロトタイプをお披露目できたらと思ってます。頑張ります。

🌐今月のトピック紹介

DESIGNTIDEが復活するとのニュースがAXISの記事になっていました。個人的に興味を惹かれたのは、ディレクション陣の一角に武田悠太氏が名前を連ねていること。氏は2023年に「EASTEAST_」を手掛け、東京の現代アートシーンに大きな動きをもたらしました。他にも、海外からは、デザイン誌『Dezeen』と関わりの深いMax Fraser氏や『Sight Unseen』誌の面々がディレクターとして参加するようです。インタビューで印象的なのは、おおざっぱに言えば、デザインよりもアートを重視するという武田氏のメッセージ。長く続いたデザイン思考の潮流が別なるものに取って代わられていく予兆を、ここにも感じ取ることができそうです。(太田)

水道橋で陶器や食器を扱うセレクトショップに千鳥というお店があります。器好きの界隈にとっては有名店らしく、他の同業者さんからもしばしばメンションされるほど。「料理がおいしく見える器」を謳っている通り、同店のオンラインショップには、料理を盛りつけた食器の数々が並びます。ブツ撮りとしても素敵だなあと常々思っていたところ、千鳥スタッフによる器と料理をテーマにしたYouTubeチャンネルが今月開設されました。画面の隅々まで行き渡った上質さに、ぜひ触れてみてください。(太田)

ニュージーランド産のFlesh and Blood(FaB)というカードゲームのタイトルが日本語版となって5月に発売されます。それにあわせて、来月は新エキスパンションのお披露目イベントとなる大規模大会も東京・高田馬場で開催されます。この大会は800人定員というもので、開催2週間前の4月末現在でチケットの70%が売れているそう。FaBは全力ベットしているタイトルなので、個人的にもうれしい出来事です。国内で盛り上がりをみせるカードゲーム市場の伸長に乗っかって、日本語版から始める新規プレイヤーがどんどん増えてしてほしいなと思います。

関連して、カードゲームカルチャーの動向も少し取り上げておきます。ひとつは、以前もメルマガで取り上げた『カードゲームうさぎ』、その作中に登場するIPオリジナルのトレーディングカードがじっさいに制作されるそうです。そのためのクラファンが実施されていますが、現在1000%の支援を集めてます。すごい人気。もうひとつは『Slay the Spire』のボードゲーム版の日本語化について。もとはデジタルカードゲームの革新的なタイトルとして世界中から称賛された同作のフィジカル版が、ついに日本語で楽しめるそうです。ぜひ遊んでみたいので、近くでもっている人がいたら声かけてください!(太田)

数年前、島根から東京に戻ってきたとき、いろいろとカルチャーショックのような感じがあった。そのひとつが、経済的にそこそこ調子の良さそうな同世代の気持ちがよくわからなかったこと。掲題のリンクは特集のカバー的な記事だが、ほかの記事もなかなかリアリティがあっておもろい。コメントを書こうとすると麻布競馬場みたいなノリになりそうなので差し控えるが、これとかこれとか。どれも有料記事だけど、明日の13時頃までは無料で読める。興味ある方はそれまでにぜひ。(瀬下)

今年度の「青少年のインターネット利用環境実態調査」の結果をまとめている記事。著者も紹介しているように、動画や配信周りの結果が面白い。たとえば、「撮影や記録、制作をしている」と回答した子どものうち「配信をしたことがある」は18.3%みたいな。先の日経の記事もそうだけど、自分としてはこういう記事を「リサーチ」として読んでしまう。しかし、同世代で子どもをもつ友人知人にとっては、当たり前の現実なのだろう。妹一家と喋るなどして、もう少しリアリティを感じたい。(瀬下)

公益財団法人新聞通信調査会が出している『メディア展望』誌の4月号より。先月ル・モンドなどがオープンAIと契約した旨を紹介したが、本記事はAP通信のそれをかなり具体的に紹介している。連携の内容は通信社らしいもので、ローカルメディアの記者が地方議会の議事録や裁判所の判決など分量の多いものについて要約を利用できたり、キーワードごとに通知を飛ばせたりといったソリューションを提供しているとのこと。現状の生成系AIはどれも事実確認が弱いと感じているので、そこがキモになる通信社での活用は気になる。(瀬下)

藤原定家による古今和歌集注釈書の自筆原本が冷泉家の蔵から見つかったというニュースを見て、冷泉家についていろいろ調べてみたらおもしろかった。冷泉家は約800年続く京都の名家で、和歌にまつわる貴重な文献を家の蔵で管理し続けているらしい。しかしその保管は実質的にボランティアで、文献の修理だけでも毎年2000万円ほどかかるのだとか。蔵を建て替える際に文化庁からはコンクリートを薦められたが、100年保たないから却下したらしい。こういう国の根幹にかかわる文化的資料(国宝や重要文化財も複数含まれる)を、ひとつの「家」が守らなければならないという問題について、40代の若い現後嗣がどう考えているのかが興味深いなと思った。100年を短いと捉える時間感覚の実務について考えるという観点で、ビジネス民や投資家民と一緒に話を聞きに行ってみたい。(松本)

Claude3はさすがにすごい。Claude2.1の時から、大量のトークン(=インタビューの文字起こしテキスト)を処理できるほぼ唯一の手段であり、ライティング業務のもろもろの局面で使うならChatGPT等より優れていると思っていたが、完全に実用レベルになってしまった。当該記事の論調のように「ライティングの仕事がなくなる」とは思わないというか、むしろひとりのライターが処理できる案件数が増えるので個人的には歓迎したい流れではある。というか現にめちゃくちゃ助けられている。AIを取り入れることは、AIに渡しやすいように作業を分割するということでもあり、AI側の試行錯誤と業務側の試行錯誤を両輪で回す必要がある。それが今は結構楽しい。同業者がどんな感じで使ってるのかとても気になる。(松本)

記事や論文の要約を、複数の粒度で生成できるツール。左右スクロールで粒度の違う要約を行き来できる。アイデアとしてめちゃくちゃ面白いし、いろいろな広がりがありそうで今後が楽しみ。ただ運営コスト的には大変らしい。生成AIは冗長性を確保するツールが強いと常々思っているが、その強みを生かそうとすると生成数が増えてコストがかさんでしまいがち。そこがうまく解決できたらこの手のツールは一気に普及しそうだし、自分の仕事ももっと楽になりそう。(松本)

🔗オマケ

Troublemakers No.1(太田)

📒編集後記

  • 今年はカードゲーム大会の海外遠征にどんどん行ったり(2月のマニラにひきつづき6月はシンガポールの予定)、海外から日本へ来るカードゲーム仲間と交流(これは5月)したり、国際的な交友関係を広げていきたい~! そして紀行文や交遊録を書いていくぞっ、と意気込んでいる連休前の今日です。(太田)

  • 遅ればせながら、ようやく年度末が締まってきたような感じです。何ヶ月も修羅が続いているような感じで、2023年(度)の振り返りすらまだできていません。ひとまず5月の文学フリマで、自分のやりたいことやら最近考えていることなどまとめようかなと思っています。ブログ記事のような謎のコピー本をつくりたい。(瀬下)

  • 4月は本当に一瞬で過ぎ去っていった。今年取り組む自主企画系のプロジェクトについて、おおむね見通しが立って一安心。新しいゲームつくるの楽しみだなあ。あとはもう少し本が読めたら言うことないんですが。。(松本)

***

ここに入りきらなかったURLを貼ったり、ゲーム制作の進捗を報告したりするDiscordをやっています。気になる方はコチラからぜひ覗いてみてください。(瀬下)  

無料で「ecg.mag」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら

誰でも
配信者ハイパーゲーム大会|ecg.mag #10
誰でも
フィールドワーク展XX【20:00】をみてきました|ecg.mag #09
誰でも
いま話題の『パルワールド』を40時間ほど遊んでみた|ecg.mag #08
誰でも
何もかも初めてだったゲムマを振り返る|ecg.mag #07
誰でも
IDEOの従業員削減、RPG学研究、イセドルの日本メイドカフェ体験など|ecg.mag #06
誰でも
サーキュラーデザイン、メディア展望、むこうぶち……など|ecg.mag #05
誰でも
『マジック・ザ・ギャザリング』30周年を祝して|ecg.mag #04
誰でも
韓国バーチャルグループ「イセゲアイドル」新曲「KIDDING」がK-POPチャート殿堂入り|ecg....